真っ平らな地面がどこまでも広がっている。わたしはそのど真ん中に立ち尽くしている。地面から石柱がいくつもいくつも飛び出し、空高く伸びてゆく。塩の柱でなくてよかったと、変なところにほっとする。石が意思を持った生き物みたいに絡みあう。溶け合い混ざってゆく。巨大な石のかたまりができあがり、石肌のあちこちが赤熱する。ガラス質に変質し本物のガラスになる。ガラスの向こうに人影がちらつく。そんなプロセスが周りの数万カ所で同時発生する。草原だったはずの地面が石で覆われてゆく。砂利道から石畳に、それからアスファルトに。見渡す限りのすべてに巨大なビルが並ぶ。いつの間にか周りには人が行き交っている。その誰もが向かうべき先を知っている。あちらからこちらへ、ここからここではないところへ。わたしは立ち尽くしている。向かうべき先を求めて首を巡らせる。「向かうべき先?」どうしてわたしは向かうべき先なんてものを求めていたのだろう。求めてしまっていたのだろう。なんでみんなは自分の向かうところを知っているのだろう。わたしは、そうではないのに。どうして、どうして。