目に付くすべてのものがタッチインタフェースに見える。目に付いた公園のベンチに人差し指で触れる。ぺんきのはげた木材が虹色に発光し、繊維の隙間から何千羽の木製ハトが飛び出す。そのハトにはタッチパネルが見て取れない。どうやら派生物にはないらしい。だからなんだという話である。わたしはコートの肩にくっついていたホコリを手で払う。その前にごく小さいホコリのタッチパネルを爪先でタップする。ホコリからたくましい手足が伸び、四足歩行でどこかへ駆けてゆく。わたしは自身を見下ろす。無数のタッチパネルが見えたので、片っ端から触れる。イベントが発火する。全身でこの世に発生しうる現象がすべて現出する。わたしはわたしでなくなり、無作為にあれこれなる現象の発火点と化す。道行く人はそれを見て、なんだかわからないけれど合掌し、祈りの文句をつぶやき始める。