寒くなると、わたしたちの街の住人は巨人の体内に潜って暖を取る風習がある。巨人は冬になると訪れる。冬の嵐を伴って。一切は凍りつく。わたしたちは凍り付かないように巨人に群がり、スコップで巨人の肉体を掘り進む。巨人の皮膚は氷で、さくさくと掘り進んでゆく。内側の筋肉は脈打ち、湯気がこちらへ押し寄せてくる。わたしたちは筋肉繊維をかき分け、肉と筋の間にある隙間に潜り込む。身体が温まる。眠気がやってくる。眠っているうちに、身体が溶けてゆき、巨人の血肉になる。あたたかいのでなにひとつ問題にならない。春になればわたしはわたしとして産み直されることを知っている。