わたしは10駅ほど先にある事務所まで歩く習慣がある。寒くても暑くてもおかまいなしだ。そもそもわたしは歩くことが好きだし、健康に良いという後押しがあるので言うことなしである。人に話すと驚かれるも、「健康のため」というキーワードを添えると、すべてが納得される。しかし、わたしの目的は別にある。歩きやすい鉄板が入ったブーツを履き、プロテクターを身につけ、通勤鞄を手に家を出る。今日は道が凍結しており、地割れがいたるところで発生している。わたしは地割れを飛び越え、凍土から飛び出してくる触手の体液をプロテクターで防ぐ。しばらく進むと、地面が消滅し、下方を雲が覆い尽くしている。わたしは通勤鞄から携帯飛行機を取り出し、空へ滑り出す。雲を突き抜け、下方にはXX駅が見える。事務所までちょうど半分といったところか。空中には羽の生えた猫がいて、通勤中の電車を食べている。相対速度マッハ5で、わたしはすれ違いざまに猫の喉をなでる。それからパラシュート降下する。ぴったり事務所の前に着地する。わたしはプロテクタなどを通勤鞄に押し込み、事務所の階段を上り、オフィスのドアを開ける。 今日も1日がんばりましょう! 同僚から、XXさんは今日も元気だね、ウォーキングは健康に良いのだね、とコメントをいただく。このためだけにわたしは生きているのかもしれない、そんなことを思ったり、する。