親戚に頼まれて、実家の押し入れ掃除に向かう。1年ぶりの実家である。毎年、親族で大掃除をするのだから、今でなくてもよかろうに。が、なにがしかの理由があるのだろう、親戚から報酬の話まで切り出され、かえって興味がわく。わたしは車から掃除用具を取り出す。古い鍵で実家の入口を開ける。隙間からなにが通り過ぎていった。え?うしろを向く。黒っぽい虹色というか、なにかがすごい速度で見えなくなった。顔を戻す。隙間からなかの様子を確かめる。かびくさく、あちこちにホコリがたまっているとはいえ、子どものころの記憶にある実家ほぼそのままの風景が広がっている。この押し入れになにがあるのだろう。わたしは腕まくりをする。スティッククリーナーをつかむ手に力がこもる。わたしはかつての住まいに踏み込む。数日後。わたしは別の親戚に押し入れ掃除の話をして、報酬の話をする。