昼食どき、わたしはファストフード店の注文待ちの列に並んでいる。店員は読心術と心理学を駆使して、客が注文する前に望むメニューを提示している。店員の背後、厨房では魔方陣から飛び出した使い魔がフライヤーを上げ下げし、バンズにレタスと虚無を挟んでいる。わたしの番になる。店員はわたしの目を見つめ、うなずく。鉈を振るい、カウンターに乗せていたわたしの前腕を切り落とす。使い魔が切り落とした腕を回収し、素材の味を活かして調理する。カウンターのトレーに腕の丸焼きが乗せられる。わたしは自分の腕を食べる。わたしの血肉だったものがわたしの血肉になる。切断面がむずがゆくなり、真新しく、悪性の腫瘍が消滅した腕が生える。わたしランチセットの金額を支払う。店を出る。道行く人の誰もがちょっとわたしの腕を見る。腕からは先ほど食べた腕にまぶされた秘術的スパイスの香りが漂っている。